2008年を振り返る(1)

「2008年も終わりますねぇ。yakitoriさんにとって今年はどんな年でしたか?」
「まぁ、いろいろあったけど、総合的に見ればいい1年だったと思うよ。というかお前は誰だよ?」
「そんなことはどうでもいいじゃないですかwただ単に日記を書きやすくするために出てきた仮のインタビュアーですよ」
「……ああ、そうっすか。いいですよ。何でも答えますよ」

「まずは仕事についてお伺いしたいのですが、普段は何をされているのですか?」
「金融関係の仕事。その中での審査セクションで働いてるよ。営業の人が取ってくる案件を見て判断するっていう仕事っすね」
「へぇ、そうなんですか。でもこのご時勢、かなり大変なんじゃないですか?」
「よくぞ聞いてくれた!本当に大変だよ。いっぱい会社が潰れてる。自動車会社の派遣切りも話題になってるけど、そうしないと会社自体が大赤字で大変なことになるんだよね。」
「ちょっと車が売れなくなるだけでそんなに大変になるんですか?」
「モノを作るには、まず投資が必要。そして、設備を動かしてモノを作るための金も必要。売れなくなると、とたんにそれが回収できなくなるんですよね。だから、完成車メーカーが減産を打ち出すと、それにあわせて部品メーカーも減産する。売れなくなるから。売れなくなるから物を作らない。作らないって事はそんなに人が要らない。だから派遣から切る、経費削減。それがバーっと広がり続けてて大変なことになってるってわけですよ」
「うーん、確かに似た事をニュースでよく言ってますね」
「そうだね。ただ、こっちはマスコミのフィルターがかかっていない生の事象が見えるってとこかな。『派遣の○○の契約を更新しないとか、色々な策を講じて年間経費を○○百万円削減して経営の建て直しを図っていきますから、どうかよろしくお願いします』っていうような事業計画書を貰って、それを見なきゃあかんのやで? そうなると、もう実感として感じざるを得ないんだよね」
「……シビアですねぇ」
「お客さんも1ヶ月先の状況すら分からんって言ってるしね。本当に難儀な時代になったよ。」

「今年仕事をしてて特に印象に残ったことはありますか?」
「そうだなぁ……現場と接してて『最近の若い奴はこんなんなのか…』ってあきれ返る事が増えたね」
「へぇ、何かあったんですか?」
「なんというか、本当にアホなんだよな。いい案件、できる案件を選んで、その実現に向けて動くのが営業の仕事なんだけど、ダボハゼのように何でもかんでも上げてくる。無理そうな案件をこっちが理詰めで詰めるとすぐに引き下がるし。ロクに考えてないから答えられないんだろうね。それが俺の3つ下くらいの世代から段々顕著になってきたと思うね」
「でも、yakitoriさんだって昔はそうだったんじゃないですか? あんまり言うのもかわいそうじゃないですか?」
「いやね、最初は何も知らなくて当たり前なんだけどね。ただ、『無知の知』って言葉もあるから、知らないことを自覚して、考えて動くようにして欲しいね。そうすれば後で必ず伸びるからさ。」
「なるほど。愛のムチってことでw」
「掛詞っすかww」
(以下追記部分)「あとは……なんというか、人間の『欲』ってのは本当に恐ろしいなぁ、と身に沁みたね」
「ふーん、それはなぜなんですか?」
「大きなことで言えばサブプライムローンがそうだよね。強欲な人(投資銀行とか)が明らかに返済能力のない人を騙して金を借りさせて、自分たちはそれを証券化して売り払って得をするためのシステムが崩壊したようなもんだからね、あれも。小さいことで言えば、相続税を払いたくないとか、そんなのもそうだよね」
「まぁ税金は少なくしたいというのは、皆さん多かれ少なかれ思ってることなんですけどね」
「その『欲』に支配されて、実態を調べようともせずに行動してしまうところが一番の問題なんですよね。だいたい、自宅とちょっとの畑しか持っていない人には相続税なんてまず発生しないわけですよ。それを『相続税対策』とか『当社の一括借上げによる家賃保証で収入も安心』とかいう甘言を業者が囁くことで、どういうわけか『よし、俺もアパート建ててみよう』とかなっちゃうわけだ」
「自分の土地に業者が建てるだけならともかく、その言い方だと土地所有者に金を借りさせて作らせるわけですよね?」
「そうだよ。建てさせれば奴らは儲かるからね。景気が良かったころは田舎でも工場の派遣社員用の需要とかが結構あったんだけど、この情勢だときっと空き室が多くなってるんだろうね。で、さっき言った家賃保証も、何年かおきに見直す契約になってるはずだから、そこで元金が払えないくらいの手取りしか残らないような金額に下げられたら……」
「返せずに借金だけが残る、と?」
「そういうこと。今はまだ顕在化していないけど、数年後には大きな問題になりそうな気がするね」
「うーん……やっぱり欲を欠いちゃいけませんね」
「お前、それは字が違うだろw」

「まぁ、仕事に関することはこれくらいにして……次はプライベートについてお伺いしたいのですが?」
「そいつは困ったなwこっちも今年も色々あったんだよね。まぁ、今年の思い出のためにも答えておこうかな」
(続く)