波のうえの魔術師

忙しいと、ついつい本を読んでしまう。

波のうえの魔術師 (徳間文庫)

波のうえの魔術師 (徳間文庫)

大学出るのを猶予して、パチンコとかで自堕落に生きる主人公が、とある老人に見初められて経済・相場の知識を叩き込まれ、株の世界にハマっていく話。だが、その老人は、とある銀行に取付け騒ぎを起こそうという野望があった……。果たしてその目的は?
某銀行がバブル期に行った変額保険の押し込み販売とか、株価が下がったときの焼け付く様な感覚とか、広報部の女に近づいて一緒に寝てインサイダー情報を得るとか、取り付け騒ぎの描写の細かさとか、色々とリアル。しかも後ろ暗い意味で。ただ、株や経済ってどういうものなのだろうって方が読めば、そのバックボーンを得られるでしょうし、そういうのを知っている方が読めば、話にグイグイと引き込まれること請け合いです。300P弱だが、すっと読めます。
一番心に残った台詞は「私とマーケット、どっちが大事なの?」……結局、主人公はこの問いに答えられずに悲しいことになってしまうわけですが、これは彼を真人間に戻すための問いかけでもあったわけで。ここで「私」を選んでたら、どうなったんだろうなぁ。平和に生きられるけど搾取される側になるんだろうな。俺ならどっちを選んでたかな。